ABOUT

元禄三年の夏に、芭蕉も来て、「四條の川原のすずみとて、夕月夜のころより有明過ぐる比まで、川中に床をならべて、夜すがら酒のみものくひあそぶ。をんなは帯のむすびめいかめしく、をとこは羽織ながう着なして、法師、老人ともに交り、桶屋鍛冶屋の弟子こまで、暇得顔にうたひののしる。さすがに都のけしきなるべし。川かぜや薄がききたる夕すずみ」と書いてゐる。

_「美しさと哀しみと」,『川端康成全集』

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老いた後、どこで暮らすか?

夏の鴨川沿いにずらりと並ぶ川床は、京の夏の風物詩である。川べりで食事をとりながら夕涼みをし、河川敷を散歩する来客は跡を絶たない。千鳥の形をした飛び石を渡れば、下鴨神社に参拝することもできる。盆地に水の恵みをもたらし、地元の歴史とともに歩んだ鴨川は、人々の暮らしや文化と密接な関係にある。そんな鴨川沿いに家を構えることは、建築家の念願の計画であり、生活に対する憧れであった。

Josh Wu

ある種の暮らしのあり方を実現したいと願った。
私と自分を取りまく環境を思いいたる、
過去にあった存在と関係を結び直すことのできる、
そんな空間をつくりたいと思った。

2010年の秋、北京に住む友人は僕に「年取ったら、どこで暮らしたい?」と聞いた。心に焼き付いたその問いかけは、これからの生活を考えるきっかけとなった。2016年の夏、僕は京都の鴨川沿いを歩いてた。五条大橋を過ぎたあたりで、一列に並ぶ家々の中にある二階建ての町家が眼に入った。目立たない佇まいだった。物が雑然と積み上げられた中庭に、微かな光が差し込んでいた。光の中で、異なる時期に住んでいた人々の営み、そして立ち去った時の痕跡さえ見えた気がした。

その翌年の秋、鴨川の前に佇む古い町家を、建築家と職人は残したいと考えた。リノベーションを施したが、中庭部分はもとの姿かたちを留めている。その中庭は、建築家が最初に目にした、光のさす心地いい場所だった。木造の造りと古い壁、門、扉、庭石の一部を残すことで、刻まれた記憶をもしっかりと保存することが叶った。かやぶきと木枠の窓、障子や襖を新しく取り換え、空間に奥行きを持たせたことで、視覚的つながりに透明性が生まれ、今の姿かたちとなった。

2018年の春、完成。障子やふすまを一枚一枚開いてゆけば、鴨川に面した管状に続く窓が見える。僕たちはその家を——Wuz Houseと呼ぶ。

Architect

ABOUT

元禄三年の夏に、芭蕉も来て、「四條の川原のすずみとて、夕月夜のころより有明過ぐる比まで、川中に床をならべて、夜すがら酒のみものくひあそぶ。をんなは帯のむすびめいかめしく、をとこは羽織ながう着なして、法師、老人ともに交り、桶屋鍛冶屋の弟子こまで、暇得顔にうたひののしる。さすがに都のけしきなるべし。川かぜや薄がききたる夕すずみ」と書いてゐる。

_「美しさと哀しみと」,『川端康成全集』

SPACE

朝、太陽の光は中庭から降り注ぐ。露は夜にみずみずしい翠苔の上で眠りにつく。谷崎潤一郎が描いた陰翳もまた、片隅に隠れ潜んでいる。時の移り変わりは、家屋の中で最も静かで、最も激しい変化だといえる。

NEIGHBORHOOD

数えきれないほどの寺院が散在し、素朴でありながら格式の高さや歴史の重みを今に伝える京都には、これら洗練された意匠のほかにも、古くて新しいモダンな風情を感じることができる。

ACCESS

五条通と河原町通が交差する位置にある八ツ柳町は、京都駅から車で10分圏内にある。最も賑やかな中心地へも徒歩10分ほどで到着でき、歩行、自転車はもちろんのこと、バスでのアクセスも便利である。

BOOK NOW

京都を訪れた なら、まずは京の中心地でありながらも、もの静かな場所から始めるのもいいだろう。檜の香りに包まれながらゆっくりとお湯につかるのもよし、読書に耽るくつろぎのひと時を過ごすのもよし。