WUZ Kamogawa

西の囘廊の入り口に立つと、紅しだれ櫻たちの花むらが、たちまち、人を春にする。これこそ春だ。垂れしだれた、細い枝々のさきまで、紅の八重の花が咲きつらなつてゐる。

_「古都」,『 川端康成全集』

concept

元禄三年の夏に、芭蕉も来て、「四條の川原のすずみとて、夕月夜のころより有明過ぐる比まで、川中に床をならべて、夜すがら酒のみものくひあそぶ。をんなは帯のむすびめいかめしく、をとこは羽織ながう着なして、法師、老人ともに交り、桶屋鍛冶屋の弟子こまで、暇得顔にうたひののしる。さすがに都のけしきなるべし。川かぜや薄がききたる夕すずみ」と書いてゐる。
_「美しさと哀しみと」,『川端康成全集』

鴨川の前にひっそりと佇む二階建ての古い町家を、建築家と職人は残したいと考えた。リノベーションを施したが、中庭部分はもとの姿かたちを留めている。その中庭は、建築家が最初に目にした、光のさす心地いい場所だった。木造の造りと古い壁、門、扉、庭石の一部を残すことで、刻まれた記憶をもしっかりと保存することが叶った。かやぶきと木枠の窓、障子や襖は新しく取り換え、空間に奥行きを持たせたことで、視覚的つながりに透明性が生まれ、今の姿かたちとなった。

私たちはそれを——Wuz Houseと呼ぶ。

ABOUT

元禄三年の夏に、芭蕉も来て、「四條の川原のすずみとて、夕月夜のころより有明過ぐる比まで、川中に床をならべて、夜すがら酒のみものくひあそぶ。をんなは帯のむすびめいかめしく、をとこは羽織ながう着なして、法師、老人ともに交り、桶屋鍛冶屋の弟子こまで、暇得顔にうたひののしる。さすがに都のけしきなるべし。川かぜや薄がききたる夕すずみ」と書いてゐる。

_「美しさと哀しみと」,『川端康成全集』

SPACE

朝、太陽の光は中庭から降り注ぐ。露は夜にみずみずしい翠苔の上で眠りにつく。谷崎潤一郎が描いた陰翳もまた、片隅に隠れ潜んでいる。時の移り変わりは、家屋の中で最も静かで、最も激しい変化だといえる。

NEIGHBORHOOD

数えきれないほどの寺院が散在し、素朴でありながら格式の高さや歴史の重みを今に伝える京都には、これら洗練された意匠のほかにも、古くて新しいモダンな風情を感じることができる。

ACCESS

五条通と河原町通が交差する位置にある八ツ柳町は、京都駅から車で10分圏内にある。最も賑やかな中心地へも徒歩10分ほどで到着でき、歩行、自転車はもちろんのこと、バスでのアクセスも便利である。

BOOK NOW

京都を訪れた なら、まずは京の中心地でありながらも、もの静かな場所から始めるのもいいだろう。檜の香りに包まれながらゆっくりとお湯につかるのもよし、読書に耽るくつろぎのひと時を過ごすのもよし。